BMW 5シリーズ 新型(523i)《写真撮影 中村孝仁》

新しいBMW『5シリーズ』は久々にスタイルがいいなぁ…と思った。実はそれはTVコマーシャルを見ての感想である。

しかしそのコマーシャルはBMWが打ったものではない。実はタイヤメーカー、ブリヂストン「レグノ」のCMで、そこには後姿からサイドビューに至るスローな映像が暗めのバックで写し出される。少しボディサイドに手は入れているものの、紛れもない5シリーズの姿である。

一時、これでもかとばかりにキドニーグリルを強調して顰蹙を買った(個人的にそう思っている)BMWデザインが、ようやくまともな方向に軌道修正されたのが、この5シリーズのデザイン(と、勝手に思う)。先にBEV版の『i5』に試乗して改めてBMWの走りの楽しさを実感していたが、このICEの5シリーズは一言で言って最高のバランスを持つクルマだと思う。

◆シャシー性能、運動性能、質感に対しての価格
それがどういうことかというと、まずパワーに対してのシャシー性能のバランス。乗り心地に対しての運動性能のバランス。そして質感に対しての価格とのバランス等々、実にバランスよくまとめ上げられたクルマだと思った次第である。

全長5mを超え、車幅も1900mmある堂々たる容姿を持つにもかかわらず、車重は1760kgで、今時のクルマとしては非常に軽い。まあ、BEVのそれに慣らされて、2トンを超えてもさほど重いと感じなくなった我々が麻痺しているのかもしれないが、これは素直に軽いと思う。

だから、5シリーズと言えどもかつてなら完全に廉価モデルの範疇にある2リットル4気筒を搭載するパフォーマンスにも不満を感じない。もちろん決してパワフルではないし、ここ一番ではもう少しなどと感じるところもあるけれど、シャシーが勝つバランスの良さが却って光る。

乗り心地も感動的である。実にスムーズで路面の質感を常に感じさせるレベルの快適さと静粛性を持つ。それでいながら少し攻めてみようかなという時は快適をそのままに、シャープな動きを味合わせてくれる。BEVとまではいかないけれど、黙って乗せると「電気自動車ですか?」と言われるほどの静粛性を持つのも事実で、実際にそう聞いてきたパッセンジャーもいた。

i5では前後のタイヤサイズが異なっていたが、「523i」の場合は前後共に245/45R19であった。20インチのタイヤがこのクラスでは当たり前のように使われる昨今では19インチは控えめだし、それでこの乗り心地と運動性能を実現しているなら、こちらの方が良い。

◆『E200アバンギャルド』と比べてもリーズナブル
インテリアは例によって最近のBMWに共通する大型のカーブドディスプレイを持つダッシュボードに、白のレザーシートという作り込み。本来は2トーンのレザーシートが標準のようだが、このクルマにはエクスクルーシブ・メリノ・レザーシートがオプションで装備されていたから、上質感はさらに向上していたのだと思うけれど、恐らく標準仕様の内装でも十分に納得のいく質感と装備であると感じた。

そして車両本体価格は798万円である。ライバルと言えるメルセデスの『E200アバンギャルド』が今や894万円であることを考えれば、相当にリーズナブルと感じられる。ここでも上質感と価格のバランスはすこぶる良いと思えるわけだ。

まあ、自動車の場合購入時だけで比較すると後々の市場価格(即ち中古市場)で大きな差が付くケースもあるから一概には言えないけれど、あくまで新車で比較した場合は、コスパという点ではBMWに軍配が上がる。

◆シルキー6を選ぶことはできないが
ICEに最低限48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせるのは今や半ば常識化しつつあり、ICEを消滅させる方向性の自動車業界にあっては延命させる最低限の仕事が今やこれなのかもしれない。

おかげでアイドリングストップしていてもエンジンが始動する際のブルンというひと揺れを全く感じさせないのは乗っている側にも有り難い。停車時間が長く停車中にエンジンがかかってしまう場合はその限りではないが、それでもブルンの揺れは最小限である。

新しい5シリーズは今のところ2リットルガソリン仕様か同じく2リットルのディーゼルターボの2択。シルキー6と呼ばれたスムーズな直6エンジンは日本ではチョイスできないが(本国にはある)、日本で乗るにはこの辺りの性能が最も乗り易くて環境にも優しそうだ。

因みに今回400kmほど試乗した燃費は12km/リットル弱。WLTCの14.4km/リットルには届かないが、まあ優秀な部類だと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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